正直に告白します。私はデザインがとにかく苦手です。以前ある仕事で「プレミアム付商品券」のチラシを自作し、節約のつもりで全戸配布したところ、ある理事の方から「なんだか詐欺みたいなチラシが届いたけれど、これ本当にうちが出したもの?」とお電話をいただいたほど。絵を描かせれば“天然ピカソ画法”と呼ばれる始末です。……そんな私でも、AIの力を借りて、後から自由に直せて再利用もできる名刺を作ることができました。本記事は、デザインの専門家ではない私が、ChatGPTとAIエージェントで名刺を仕上げるまでの体験談です。創業まもない方や、コストをかけずに小さく試したい方の参考になればうれしいです。
名刺づくりは、ずっと“壁”だった
名刺が必要になったとき、私は迷わずAIを頼りました。これだけ画像生成が進んだ時代です。「さすがに今のAIなら、名刺くらいきれいに作ってくれるはず」。そう期待して、「こんな名刺を作って」とお願いしました。……ところが、ここからが長い苦労の始まりでした。
まず、文字が読めないのです。出てきた名刺“風”の画像は、雰囲気こそそれっぽいのに、肝心の名前や肩書きが、判読できそうでできない“不思議な文字列”になっている。PDFが文字化けしたときの、あの感じです。ぐにゃぐにゃと崩れた漢字を眺めながら、「やっぱり日本語はまだ難しいのか」とため息が出ました。
では細かく指示を出そう、と思った私を、次の壁が待っていました。作りたいイメージは頭にあるのに、それを“なんと言えばいいのか”が分からない。「おしゃれに」「いい感じに」では、AIには伝わりません。プロのように「余白を広く」「セリフ体で上品に」と的確な言葉へ分解できないのです。自分にデザインの語彙がないという事実を、いやというほど思い知らされました。
仕方なく「なんか違う」「また余計な飾りが入った」とやり直すたびに、結果はガチャのよう。当たりが出るまで回し続け、気づけば時間だけが溶けていきます。しかも、せっかく良い構図が出ても、文字だけ直したいのに全体が変わってしまう。直したい一か所をつつくと、別の場所が崩れる。まさに“モグラ叩き”でした。
「あれ、これ……全然ラクになっていないのでは?」。時短のつもりが、いつのまにか自分でデザインと格闘している。そんな徒労感のなかで、私の名刺づくりは数年間、この“壁”の前で止まっていたのです。
転機①:ChatGPTの画像生成が「実用レベル」になった
転機は、ChatGPTの画像生成モデルのアップデートでした。GPT Image 2(ChatGPT上の表示は「ChatGPT Images 2.0」、2026年4月に登場)です。これで何が変わったか。
- 日本語の文字が実用レベルで描けるようになった(それ以前は崩れがちでした)。完璧とまでは言えませんが、名刺やチラシのような“文字が主役”のデザインが現実的になりました。
- 複数の案を一度に生成しやすくなった(参考:API〔開発者向けの仕組み〕では1回で最大10枚)。気に入ったものを軸に、少しずつ育てていけます。
進め方はシンプルです。ChatGPTに「こういう雰囲気で」「この情報を入れて」と日本語で頼み、出てきた複数案から好みのものを選び、指示を足して育てていく。デザインの専門用語を知らなくても、言葉と“こんな感じ”の例示で方向性を伝えられるのが、私のような素人にはありがたいところでした。
※生成した画像の商用利用の可否は、提供元の利用規約でご確認ください。料金や機能は2026年時点のもので、今後変わることがあります。
転機②:印刷できる形へ──Canva、そしてCodexの「Computer Use」
デザインはできた。次は「印刷できて、後からも直せる形」にする段階です。最初はCanvaに画像を貼って切り貼りしていました。ところが、画像をそのまま貼ると、どうにも違和感が残る。ここを直したい、でも画像の中の文字は直接いじれない……という気持ち悪さがつきまといました。
ここで効くのが、文字を画像に焼き込まないことです。AIには背景やあしらいだけを作らせ、氏名・連絡先などの文字はCanvaのテキスト要素で別に乗せる。こうすれば、後からフォントも文言も自由に直せて、印刷時も文字がくっきり出ます。(すでに文字入りの画像を使ってしまった場合でも、Canvaの「Magic Layer」で文字と背景を分離して編集できることがあります。)
そして、ふと思いつきました。「あれ、これCodexにやらせたらどうなるんだろう?」。Codexは OpenAI のAIエージェントで、「Computer Use(コンピュータ操作)」という、AIが自分のPCの画面を見て、クリックや入力を代わりに行ってくれる機能があります(macOSは2026年4月、Windowsは5月ごろから提供)。ちょうど別件で、フリマ出品の処理やブラウザゲームの自動化に使っていたところでした。「であれば、Canvaに画像を流し込むくらい余裕では?」と試してみたら……できてしまいました。編集も再利用もできる、扱いやすいデザインデータに仕上がったのです。
ただし、AIに画面操作を任せるときは、いくつか鉄則があります。決済や発注の確定など“取り返しのつかない操作”は、最後に人が押す。いきなり本番ではなく下書きで試す。ログイン情報の扱いに注意する。ここを守れば、面倒な作業の多くを安心して任せられます。
仕上げ:印刷は「ちゃんと」する
市販の名刺用紙+家庭用インクジェットでも作れますが、紙の厚みや発色、断裁の仕上がりはいまひとつ。お客様に配る本番用は、ネット印刷を使うのがおすすめです。
- サイズは日本標準の91×55mm、解像度は350dpi以上、PDF(印刷用・塗り足しつき)で書き出す
- ネット印刷(例:ラクスルなど)なら100枚で数百円〜と、自作より安く・速く・きれい(価格は2026年時点の目安で変動します)
- 入稿時は、トンボ(トリムマーク)の形式が使えるかを印刷会社に確認しておくと安心
まとめ:完璧を目指すより、まず一枚作ってみる
- デザインが苦手でも、AIで「後から直せて再利用できる」名刺が作れる時代になった
- コツは「背景はAI、文字はCanvaのテキスト」。仕上げの印刷はネット印刷で
- 創業初期はお金をかけすぎず、小さく作って試し、反応を見て少しずつ見直す
画像生成AIやAIエージェントは、デザインの専門家ではない私たちが「小さく試す」ための心強い相棒です。完璧を目指して立ち止まるより、まず一枚作ってみる。そこから育てていけばいい——そう思えるようになりました。当事務所では、こうした「経営に効くIT・AIの“小さな一歩”」も、宮崎の事業者の皆さまと一緒に考えています。
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末吉宏成は、組織の情報システムを運用してきた経験と、中小企業診断士としての経営の視点をあわせ持ちます。「何を入れて、どう活かすか」の判断から、導入・運用・セキュリティ・生成AIの活用まで、コストと業務の言葉で一緒に考え、御社の社外の情シス兼CIOとして伴走します。
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